いろんなものはつながっている

アマゾンドットコムの光と影

アマゾンが日本での存在感を増してきた2005年に書かれた本。当時、発売されてすぐに読んだ。

この本は著者がアマゾンの倉庫で働いた潜入ルポで、多くの人が便利だと思い使っているサービスの裏側では自尊心を奪われた人が要求にこたえるため広い倉庫を走り回っていることが書かれている。

締めの言葉が説教すぎず、口調が重苦しすぎず、しかし現状を正確に伝えいる。

階層化社会ははたく人間をエリートと非エリートにわけていく。そこでは「考えること」はエリートの仕事であり、手足となってはたくのは非エリートの仕事だ。
(中略)
現代人はアマゾンに代表される熾烈な国際競争を勝ち抜くニューエコノミーの恩恵を受けている。しかしさらに細分化されていくであろうこの労働格差と繰り返される競争は果たして人を幸福にするのだろうか。
ワンクリックの向こう側ではその要求にこたえるために確かに誰かが働いている。ネット社会の便利さを享受することがIT企業の舞台裏で働くひとの自尊心を損なうことと無関係ではなく、ひいてはわれわれの生活基盤である社会全体を不安定なものにしていくのかもしれない。

私もアマゾンを大変便利なシステムだと思いそのサービスを頻繁に利用している人間の一人。ただ少し考えればわかることなんだろうがその良質なサービスがどのように保持されているかをリアルな形で見せ付けられると正直気分は暗くなる。

本文中にも出てきたが、この本で紹介されているアマゾンの状況は日本を含んだ世界の企業の将来像の象徴だろう。

職業はもう平等ではなくなっていく

バブル崩壊後の日本経済の低迷に鑑み、総人件費の抑制と手段として雇用ポートフォリオ導入を強く呼びかけていた。

日経連の報告書によると雇用は以下の3つのグループにわけられていると述べられている。
1.長期蓄積能力活用型グループ
2.高度専門能力活用型グループ
3.雇用柔軟型グループ

アマゾンドットコムの場合は1~3がそれぞれ以下にあたる
1.アマゾン社員
2.日通社員
3.アルバイト

サービスを享受する側と労働力を提供する側

労働格差を象徴するエピソードとして以下があげられていた。読んだ当時なんだかとても切なくなったのを覚えている。

センターで働くアルバイトの何人かに聞いてみたところアマゾンで買い物をしたことがあると人は一人もいなかった。

つまり、センターを這いずり回るようにして本を探す人と自宅のコンピュータから本を注文するひとは違う人たちなのだ。

アマゾンの安くて迅速なサービスを享受するひととそれを可能にするために労働力を提供している人は別に階層に属している。

人間は優秀なロボットか

潜入ルポの草分け的存在である自動車絶望工場で描かれているトヨタの工場との類似点を指摘している。

トヨタが肉体労働で、アマゾンが軽作業だという違いはある。しかし共通するのは払った賃金以上に働かせる仕組み。トヨタはベルトコンベアで労働者を、アマゾンは一分3冊というノルマでアルバイトを縛りつける。

もう一つの共通点はどちらの職場でも仕事が細分化されているので自分が何をしているのかよくわからないという点。よってやりがいや達成感を感じることができない。

こういった作業現場では考えることはすっかり放棄して上からの指示通りに体を動かすことが求められる。

本当は機械化したいのだけれども細かくてまだできない作業を人手でやっているに過ぎない。機械代わりに人間が働く職場において考えることが歓迎されていないのはモダンタイムスのころと寸分も狂わない。

人間は70キロそこそこの重量で細かい作業ができてしまう優秀なロボットという見方もできてしまう。

既存の書店への指摘

2005年当時アマゾンの取り扱いはまだ主に本・CDであったので、対アマゾンとして既存の書店の問題点を指摘している。

日本の出版業界の流通を非効率にしているものは再販制度と返品自由の委託販売が組み合わさったところにある。
これによって顧客に接している書店は本の値引き販売も許されず自分たちの裁量で本を仕入れることも難しい。
しかしどちらの方が害が大きいかといえば私は委託販売だと思っている。それはなぜか。小売業で一番大切な機能である、「何が一番売れるか」を考えることを放棄させている。

現在、トヨタ自動車までもが派遣社員という安価で手軽な労働力を使おうとしている。日本の職場が今後ますますアマゾン化していくことは明白。好きとか嫌いとか、いいとか悪いとか関係なく、もうこの方向に進むことは間違いないわけだからそのなかでどう自分が生きていくか覚悟を決めて行動していくしかないだろう。

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